★Vol.567.注目!もう一つの笠帽子地蔵!

昔々あるところに一世を収めた立派なお坊さんがいました。そのお坊さんが亡くなる時に弟子たちに言いました 「私は死んだのちも将来のことが気になる 私は死んだのち、村の片隅の地蔵になって 人々を見守ることにしよう。仏の心を持つものに力を貸してあげたいと思う」と言って亡くなりました。その後、その村で真面目に働く農家の夫婦がいたましたが、貧乏で正月の準備ができないでいました。そこで奥さんが作った衣を町に持っていきましたが、売れずに残ってしまいました。ちょうど出会った笠を売っていたおじさんも、傘が売れ残ってしまったようでお互いに交換して戻ってきました。 本来の昔話と少し違うのは、それは傘帽子様から見た夫婦でした。亡くなった傘帽子様は、お地蔵の一人となってその村の人々の様子を見ることにしました。年末になったら誰にどんな仏の言葉を届けるか、一年かけて考えることにして、お地蔵さんに姿を変えました。その時にあの農民の夫婦の姿も目につきました。傘帽子様は、その夫婦が人の為に一生懸命生きているのを見て、今年はこの夫婦に仏の言葉を届けることを決めました。それからも一年間ずっと夫婦を見ていました。そして冬になりました。その年の冬は、いつもよりとても寒い冬になりました。もう年の瀬も終わろうかというのに、その夫婦はお金がないので、正月の準備ができないでいました。そこで奥さんが内職で作った品物を売りに行き、餅を買って、良い正月を迎えようと考えました。 その様子を見ていた地蔵様は思いました。「それを売ったところでその場しのぎにしかならないだろう。このような良い夫婦の暮らしが未来永劫よくなるよう、仏の言葉を届けてあげたい」と考え、夫婦の未来を変えることにしました。本当は品物が売れて、夫婦は餅を食べて良い正月を迎えられる未来でしたが、品物は全然売れませんでした。未来は変えたけれど、仏の心を持った者であれば、自然と仏の道を進むだろうとお地蔵様が考えてのことでした。傘は全く売れませんでしたが、その帰り道、寒そうにしているお地蔵様を見て、夫婦はお地蔵様達に傘をかぶせました。しかし、ひとつ足りなかったので、笠帽子様のところに来た時は、持っていた手ぬぐいをかけてあげました。その後、傘帽子様は、この夫婦たちにこれからずっと仏様の加護がありますよう、そして仏の心をずっと持ち続けるよう願いを込め、正月のお祝いのお供え物を夫婦の家に届けました。夫婦はどこからそのご馳走が届いたのかは全くわかリませんでした。家に届いていた正月のお餅やお魚、お米やお酒を見て大変喜びしました。そして夫婦は思いました。これは笠をかぶせた御地蔵様が運んできてくれたのかもしれないと思いました。そのご馳走の中には、手ぬぐいが折りたたまれて入っていました。それは傘が足りなかったとき、傘帽子様にかぶせた手ぬぐいでした。 それを広げてみると、なんとも立派な白い龍の絵が描いてありました。その白い龍の絵は、不思議なことに毎年成長し大きくなっていきました。白い龍の絵が大きくなるたびに夫婦の生活は豊かになっていきました。時が経ち、夫婦は仏像を建てられるほどに裕福になりました。裕福になった夫婦は、今度は村に寄付をしたり様々な貢献をしていきました。そのおかげもあり、その村は大変潤いどんどん栄えていきました。それを見届けたお地蔵さまは、次の町へに行こうと立ち上がりました。そのお地蔵さまは、弘法大師様でしたとさ。

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